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 さて、体験談を一つご紹介しましょう。

 久しぶりに実家に泊まりにいくと、母親がカゼをひいていました。二週間にもなるというのに一向に治らないとのことで、声がおかしく、痰がからんだような咳をしていました。施療は翌日におこなうことになり、その日は早めに休みました。

 夜中に目をさますと、隣室から母親のうなされている声が聞こえてきます。最初はイヤな夢でも見ているのかと思ったのですが、ハタと思いいたりました。五臓の色体表の五声の欄には(うなる)の字が載っているのです。

 呻き声(うめきごえ)は腎と関連があるとされています。腎臓は泌尿器系の内臓ですが、東洋医学では「生命源」との見方もし、高齢者や衰弱時の施療の大切なポイントになります。カゼとはいえ、もはや肺経などの呼吸器系だけを施療していればよいという状態ではなく、思った以上に体力レベルが落ちていることに気づかされたわけです。

 翌日、施療は腎を補う意味で足と腰を温めることから始めました。このようなときの強い施療は体を疲れさせますから、腎経の中から兪府(ゆふ)を選び、カップを吸着させました。吸引圧は35ぐらいだったと思います。色素反応は薄い紫色程度で、瘀血もわずかしか出ませんでした。しかし、この程度の施療をきっかけに、病状は好転していったのです。

 カゼの症状はさまざまで、しかも日替わりといってよいほど状態が変わっていきます。施療点は、その変化に対応させていくことが必要でしょう。そして発熱を伴いますので、体力レベルに見合った施療の量(カップ数、吸引圧、施療時間など)を見極めることも大切なことだと思います。