「五臓の色体表」によると「耳」は「腎」と関連があるとされています。確かに背部の色素反応をみてみると、ほとんどの方は「腎」に反応をみます。督脈(とくみゃく)命門(めいもん)」や膀胱系「腎兪(じんゆ)」「志室(ししつ)、または腎の募穴京門(けいもん)です。これらのツボは、すべて腰にあり、ちょうど肘の高さに並んでいます。

 しかも悪い耳と同じ側に反応があるのです。そして多くは、同じ側の足の腎経にまで連なっています。

 足の腎経は、真後ろの膀胱経と内側中央の真ん中あたりを通っていますが、ここが固くツレていて、軽く押しても強い痛みがあります。また、普通は色の出にくい足の裏の腎経「(ゆう)(せん)」に強い色素反応をみたこともあります。

背部の内臓ポイントや経絡の異常は、ただちに重い腎臓疾患につながるものではなくても、腎の疲れや機能低下を現しています。耳鳴りの数か月後に腎臓疾患が起こったり、耳の近くのツボだけでは高齢者の耳鳴りには苦戦を強いられることなどは、このこととの関連をうかがわせます。むしろ耳の症状は、耳の弱りを知らせているものといえるでしょう。

 局所治療点として「翳風」はとてもよく効きます。しかし、からだ全体の健康を考えたとき、あるいは耳の症状の根治を考えたときには、腎系統の治療が必要になってきます。

頭部の三焦経

(中山仁一著 経絡経穴図から)

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耳の疾患の治療点というと、まず思いつくのは三焦経でしょうか。三焦経は耳をグルっとめぐっている経絡ですし、古い文献には三焦経のことを「耳経」と記しているものもあります。また、胆経(ふう)()」や「(かん)(こつ)、小腸経聴宮(ちょうきゅう)督脈(とくみゃく)百会(ひゃくえ)なども耳に効くといわれています。

 このように多くのツボがありますが、耳の局所治療点の横綱としては、三焦経(えいふう)をあげたいと思います。色素反応も出やすいですし、とてもよく効きます。

 まったく聞こえない方の翳風(えいふう)」の治療で、途端にガサガサと聞こえてきた例もあります。急な耳の奥の痛みが強めの吸引、10分ぐらいで治まったこともあります。そのほか耳鳴りにも効果があります。

 ツボの位置は耳たぶのすぐ後ろ。あごの骨と耳の後ろの骨((にゅう)(よう)突起(とっき))の間で、押すとツーンと感じるところです。ちょうどあごの関節のすぐ後ろなので、口を開け閉めするとガクガクするのがわかります。

 ただし非常に狭いエリアなので、カップはせいぜい2号か、1,5号が扱いやすいでしょう。おそらく吸引ホースをつないだままの連続吸引になると思います。このとき吸引圧は、ほどよく調節してください。

 また、この「翳風(えいふう)」に続いて耳のまわりの三焦経もお勧めです。三焦経は耳のつけ根、頭と耳の境目あたりをグルッと回っています。ここは髪の生えぎわ近くですし、頭蓋骨がデコボコして治療しづらいところですから、あまりツボを意識せず、吸着できたところでよいと思います。3号~4号カップを耳と接触させる感じでかけてください。