うつ伏せの姿勢では、後頭部とともに肺の反応部に水疱反応があらわれました。肺は呼吸をする臓器ですが、東洋医学的には「気」、「気力」などとも関連が深いとされています。

 この方の無気力という症状、そして消え入りそうな声というのは、呼吸器系統の弱りからくるのかもしれません。また五臓(ごぞう)(しき)体表(たいひょう)()()によると、悲観的な精神状態も想像されます。

 あお向けの姿勢では、みぞおち付近の心経巨闕(こけつ)と、両乳首の真ん中にある心包経膻中(だんちゅう)に水疱反応があらわれました。ともに心臓系統の代表的なツボです。

 「五臓の色体表」の()(せい)(しん)は、意識や精神の中枢・コントロールセンターととらえられていますが、まさに!といった感じでしょう。

 さらに、左側胸部の脾経の領域と胸腺部にも水疱反応はあらわれました。胸腺は胸の上部にある免疫臓器です。

 脾臓の系統は、東洋医学的にみると「思い煩う」といった感情などと関連があるとされています。また、食欲不振や免疫力の低下も予想されるところです。

 こころと体をむすぶ東洋医学的な解釈は、科学的には説明のむずかしいところだと思います。しかし、少なくとも今回の例では、体にも問題をかかえていることは明らかでしょう。そしてこれらの部位の反応は、多くの精神科疾患に共通のものでもあるのです。

肉体の疾患はともかく、こころの病いはあまり同情されないようです。なんとなく敬遠されたり、怖がられたり・・・。あるいは甘えや軟弱な性格が原因と決めつけられたり・・・。

確かに日常的なストレスにうまく対処できないのは、社会的に未成熟といえます。しかし甘えなければ生きていけないような、体の弱さを持ち合わせているケースもあると思うのです。

また、精神に対する物質的な究明が急ピッチで進められ、脳内のさまざまな神経伝達物質が取り沙汰されています。カッピング療法でも後頭部などに水疱反応がよくあらわれ、これを裏付けているように思います。

しかし、問題を脳だけの、しかも特定の物質に限定してしまってよいのでしょうか?

 ある施療例ですが、育児ノイローゼから無気力な状態がつづき、外出もままならないという方をみたことがあります。

 何年にもわたって、恐怖感から精神安定剤を飲みつづけ、それでも春になると症状が悪化するとのこと。張りついたような無表情と消え入りそうな声とが印象的でした。

 カッピング療法での反応は、色のでない虚の反応がほとんどで、全体に強い臭いがありました。

 この臭いは病状の重いときの腐ったような臭いではなく、おそらく薬の影響だろうと思います。薬品を飲みつづけたり、手術をくりかえした方に特有の臭いがあるのです。

 そして後頭部だけでなく、体のあちこちに次々と水疱反応があらわれてきました。

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上から、胸腺部、心包経『膻中』、心経『巨闕』に5号カップを吸着、胸の中央部は心因性の疾患によく反応が現れる。