はっきりと診断された臓器以外の内臓反応部に色素反応が現れた、という経験はないでしょうか? 
実は、よくある話なのです。

ある「卵巣のう腫」の方の例ですが、腎臓や小腸、膀胱といった内臓反応部付近が主な施療点でした。
卵巣の位置を考えると妥当でしょうし、凝固反応や紫斑反応、さらには悪臭(カッピング療法の吸引による)までありました。

施療を重ねていくと、鎮痛剤を欠かせなかった生理痛が消えた、足が温かくなったなど、経過も良好で、施療の主力は骨盤周辺で間違いなかったと思います。

 ところがこの方、毎回肝臓や胆のうの部位に色素反応が出て、しかも色が消えにくいのです。不審に思い腹部を探ってみると、肋骨の下縁の筋肉が、右側だけ硬くなっています。

 場所は、乳首からまっすぐ下ろしてきた位置付近で、ちょうど肝臓の募穴期門(きもん)」や胆のうの募穴「日月(じつげつ)」のあるところです。

 募穴は、腹部では最重要といってもよいツボで、ほぼ臓器そのものの位置にあります。各経絡に対応して全部で12穴あり、肝・胆の場合は右を中心にみます。

 しかも今回の場合、募穴部の硬さは恥骨部まで連なっています。そして、念のために探った足の肝経(太もも内側)は両足とも過敏になっていました。

 ここに至って、肝・胆の色素反応の意味が見えてきた、という次第です。

  肝・胆の募穴である「期門」や「日月」の位置は、肝臓や胆のうの状態を非常によく表すところです。左側の同じ位置と硬さを比べてみるとはっきりしますので、深酒の翌日に試してみるのも一興かもしれません。今回の例でも、硬いのは右側だけで、左側は柔らかでした。

 施療するには、乳首からまっすぐ下した線と肋骨の下縁が交わる点を目安にするとよいでしょう。やや上方に吸着したり、やや下方に吸着することで、2穴をより的確に施療できます。

 ただし硬さのある場合には、痛みを感じやすいといった傾向もあるようなので、圧を少しずつ上げていくのもよい方法です。吸着カップをはずすときには、もう一方の手を皮膚に添えて、ゆっくりはずすようにしてください。とくに皮膚がカップに吸いついた感じのときには、注意しましょう。優しさも、施療のうちだと思います。

 さて、この募穴部から恥骨へのラインは、腹直筋の外縁にあたり、一般には脾臓の経絡とされています。ただ今回の場合は、右側だけなのですから、肝・胆の反応と解釈したほうがよいと思われます。

そして状況によっては、さらにその外側の肝経がひも状に触れるようになっていたり、足の肝経へと続いていくこともあります。

 どうもある種のパターンがあるようで、婦人科疾患だけでなく、鼠径部のヘルニアや(いん)(のう)水腫(すいしゅ)といった陰部がらみの疾患。そして、十二指腸潰瘍やアトピー性皮膚炎などでも、この一連の現象をみたことがあります。

 むしろ病名というより、患部と経絡の位置的な関りや、検査数値の現れる以前の機能低下に反応しているといった感じです。局所の診断名にとらわれ過ぎず、全体的な視点も大切ということなのでしょう。

 ところで今回のこの女性、腹部が落ちつくと背中の肝・胆部の色素反応も消え、穏やかな目つきになりました。そしてその後、結婚して出産。現在は一児の母となっています。 

肝胆の治療例。
乳首の線上に肝臓の募穴『期門』と
胆のうの募穴『日月』を同時に吸着。
ななめ下は肝経『章門』。
側胸部は脾経『大包』

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