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  慢性便秘症の人の施療指導例です。
あるときから右下腹部が痛みはじめ、病院で検査を受けたが原因はわからなかったとのことでした。

 虫垂炎(盲腸)などでしたら病院では見逃すはずはありませんし、そのころから便秘が一層ひどくなり、普通の状態ではないといいます。また、ご本人も大腸経をカッピング施療しているが結果はかんばしくなく、一抹の不安があるようでした。

色素反応を診ることを兼ねて背部にカップを吸着すると、腎臓、大腸、小腸の反応部が色のでない虚の反応となりました。とくに、右の膀胱経大腸兪(だいちょうゆ)に至っては虚の反応に加えて凝固反応があらわれ、最大の病根と思われました。

 ほかには、胃と肝臓の反応部に多少の色素反応もでていましたが、異常を感じるほどではありませんでした。

 また、腹部でも大腸の募穴天枢(てんすう)だけに濃い色素反応があらわれ、大腸に問題があることは間違いなかったと思います。

しかし、大腸経(ごう)(こく)(きょく)()などにはご自身でカッピング施療した色素反応が残っていて、それでも結果は思わしくなかったわけです。もちろん腰部や腹部の大腸関連のツボなどをもっと施療する必要があったのかもしれませんが、いま一つ釈然とはしませんでした。

同僚とともに食事にいったところ、4人中の3人が2~3日にも及ぶ下痢に見舞われてしまいました。数種類の中華料理をみんなで分けながら食べたので、4人ともほぼ同じものを食べたことになります。また、私にいたっては下痢とともに肘から手首にかけての大腸経・肺経の領域にジンマ疹がでましたから、おそらく悪い食材が混ざっていたのだと思います。

 下痢は病的な状態ではありますが、体が悪いものを体外に排出しようと働いている証でもあり、安易に下痢止めなどの薬を使う気にはとてもなれません。とはいうものの、最も重症となった同僚の顔は苦痛に青ざめ、「O-157か?」あるいは「下痢をまぬがれた1人(唯一の女性)は、よほど頑健な胃腸の持ち主に違いない」など、さまざまな怪情報が飛びかい、苦しいやらおかしいやらの日々となりました。

ところで、下痢で大腸経にジンマ疹がでたというのは、大腸が消化器系の内臓であることを考えると、とてもわかりやすい経絡の反応だと思います。また、ジンマ疹が肺経の領域に及んでいることも、東洋医学的には説明することができます。

肺は呼吸器系の内臓ですから、ふつうは消化器系の大腸とは関連がないように思われがちです。ところが、東洋医学的では「臓と腑」という、最も重要なつながりがある関係だととらえているのです。このことは「五臓の色体表」で肺と大腸が同系統の「臓と腑」に配当されていることや、「経絡の相互関係図」で隣同士に配置されていることで確認することができます。
この「臓と腑」の関係は、例えば大腸の疾患に肺経に反応がでたり、肺経の施療が大腸に効果があったりするということで、裏表といった関係になります。もちろん背部や腹部が施療の中心ではありますが、手足の施療経絡を決定する場合などの応用範囲が広がるということです。 個人的にはこの関係を視野に入れて施療することで、ほぼ7~8割のケースには対応できるという印象をもっていますが、どうでしょうか?

 また、残りの2~3割のケースでは、この「臓と腑」の関係だけでは対処しきれないわけですが、今回はその残りのケースでの症例をご紹介したいと思います。