それは、脾臓部の反応でした。高さが2cmにも及ぶ大きなコブの反応が現れたのです。このコブは、凝固反応と考えられます。

 治療家としては失格なのでしょうが、思わず声をあげてしまったのだと思います。穏やかな声でいわれました。

「実は私、乳がんを持っているのです。医者にはあと半年の命といわれたのですが、自然な療法で、もう何年も生きていますヨ」

落ちついた口調からは、がんを治せないまでも共存していくという、ある種の達観や凛とした精神性を感じました。また、むしろ異常な反応がでていて当然なのですヨ、と逆になぐさめられているようにも思われました。私自身の未熟さと色素反応の確かさを意識させられる一幕でした。

さて今回のケースでは乳房の疾患が脾臓部に反応していると考えられるのですが、これは「五臓の色体表」で
確認することができます。脾臓の系統の五支の欄に「乳」と載っています。

また、乳房の中心である乳首は胃経絡のれっきとしたツボになりますが、胃と脾臓は陰陽(表裏)の関係になっています。乳首への吸玉カッピング療法は痛みやすいため、あまり用いられないとは思いますが、位置だけは胃経図で確認してみてください。

この方には、アミノ酸の重要性と腎臓部・脾臓部の反応の意味をお伝えいたしました。そして、血液や瘀血についても説明いたしました。すると「吸玉カッピング療法は素晴らしいですネ」と、やはり穏やかなお答え。そして、今度は励まされているように感じました。

もし自分ががんだったら、これほど肯定的でいられるだろうか? 背部の色素反応で人と関わることは、単なる施療技術を越えて、さまざまな「学び」になっています。

玄米採食を中心とした健康法グループの集まりで、吸玉カッピング療法のデモンストレーションをしたときのこと
です。

次から次へと吸玉カッピング療法の体験をしてもらっていたのですが、ある60歳台の女性が印象的でした。とりあえず施療体験をという感じでしたから、ゆっくりと健康状態を聞く時間はありません。ただ、くすんだような黒っぽい顔色と目の下のクマが気になりました。

 玄米採食は、日本の伝統にそった意義のある食事方法だと思います。ところが注意をしていないと、タンパク質(アミノ酸)などの栄養が不足し、貧血や体力低下をまねいてしまうことがあります。このときも、顔色に精彩のない方を何人かお見受けしていました。

吸玉カッピング療法は、体力レベルを考えて30圧位の弱い吸引圧で、背部の反応部を中心に吸着させていました。吸引圧が弱いこともあって、全般的に色素反応はでないようでした。

ただ、腎臓部だけは吸着中から赤黒い色素反応がみてとれ、顔色や目の下のクマとの一致が感じられました。東洋医学(五臓の色体表)では、黒い色は腎臓と関連づけて考えられているのです。

色素反応は病名がつけられる以前の段階でも現れますから、この方がただちに腎臓の疾患であるとは限りません。また、東洋医学では腎を生命源(精)が宿るところとみますから、単に体力低下を意味していたのかもしれません。

ただ、いずれにしても施療すべき系統(経絡)は腎だろうと予想されたわけですが、カップを全部はずすと、思わぬ反応が現れ、驚かされてしまいました。




















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