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20歳台後半の男性の例ですが、あるとき真っ赤な顔をして、耐えるように体を硬くしているのに気がつきました。目も真っ赤で、上半身全体が脈打っているようにすら感じられました。

おそらく、このときの血圧は200を越えていたのではないでしょうか。心臓が猛烈に機能こう進しているのは間違いなく、年齢によっては危険な状態だったと思います。

「ちょっと、吸玉カッピングでもしてみようか?」

気軽に声をかけました。血圧や心臓の機能は気持ちに左右されやすいため、なるべく動揺させたくありませんでした。

 施療は、腕にある心包経郄門(げきもん)を使うつもりでいました。心包経は心臓に関係する経絡ですし、「郄門」は急性症状に効果があるとされている(げき)(けつ)という特別なツボにあたっています。また、何度かこのツボで急場をしのいだことも記憶に残っていました。

あお向けになってもらい腕をまくると、手のひらまで真っ赤になり、ほてっています。

「これは効かないかもしれない」との思いが頭をよぎりました。心臓や頭部に集まり過ぎた「血流/熱」を末端に誘導することが、腕の施療の効用のひとつだと思います。ところが手先まで真っ赤なのですから、これでは腕にまで集まってしまっていることになります。

それでも一応、左右の「郄門」にカップを吸着させ、次に左右の胃経「足三里」を強めの圧で吸引しました。足の
三里(さんり)」も「のぼせ」や「高血圧」を鎮静させる働きがあり、こちらにも期待したわけです。

しかし、今回はうまくいきませんでした。

「頭に血が昇って、寝ていられない!」

という彼は、ムックリ起き上がってしまったのです。

リラックスさせようとあお向けに寝かせたことが、裏目にでてしまったこともあるでしょう。しかしこの失敗は、見ための症状は心臓のものですが、もっと大きな概念でとらえたほうがよい! と気づかせてくれました。