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熱の循環を考えたとき、熱いものは上へ、冷たいものは下へ、それぞれ向かうことは当然です。ところが人の体温では、体内環境を一定にしようとする機構があるため、普通このことは意識されません。

 また東洋医学でも、寒熱・上下などを陰陽という大きな概念でとらえていますが、やはり循環してバランスがとれている状態を健康と考えています。そして、陽(熱・上部などの概念)の代表が心臓の系統、陰(寒・下部などの概念)の代表が腎臓の系統とも考えられています。

今回のケースは、この熱や上下のバランスが崩れてしまい、循環するべき血流が上半身に偏っていると考えたほうがよかったのでしょう。陰陽でいえば、陽(熱・上部)の力が過剰になっていて、同時に陰(寒・下部)の力が衰弱している状態です。

そこで「下半身の陰の経絡」を意図して、足の「三陰交(さんいんこう)」というツボを施療することにしました。衰弱している陰を刺激し、陰を強めて陽とのバランスをとり、陽の暴走を鎮静させようと考えたのです。

「三陰交」は足の内側で、くるぶしの数cm上の骨ぎわになります。名前のとおり肝・腎・脾という3つの陰の経絡が交わるツボで、広い用途が期待できる、陰の代表的なツボといってもよいでしょう。

足を垂らして座った姿勢で、3号カップを強圧で吸着させると、途端に「ウワーッ」という小さな声が聞こえてきました。続いて、

「どんどん下がってる。楽になっていく」何とか今度はうまくいったようです。足の「三里」と「三陰交」を吸引し続けて、約10分ほどですっかり落ちついてくれました。

寒熱・上下のアンバランスは、女性の更年期特有の「冷えのぼせ」という症状が知られています。ただ今回は男性ですし、ニュアンスが違う例と考えていただければよいと思います。

実は、この男性は過去に腎臓を患ったことがあります。そしてこのときも体調を崩していて、尿に濁りや血が混ざっていたそうです。腎臓は陰の代表的な臓器ですから、ここに陽(心臓)の暴発的な症状が発生したことや、陰(三陰交)を施療して効果があった理由を感じますが、いかがでしょうか?

ちなみに、この男性の背部にカップを吸着させてみたところ、腎・膀胱部に濃いまだら色の凝固反応があり、心臓部は色素反応(中)に過ぎませんでした。