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後頭部に続き、足をさぐってみました。というのは、不眠症の場合には足の冷えを訴える方も多く、経験から後頭部のコリとの関連もうかがえるからです。ただ今回は足の冷えは感じられませんでした。

 その代わりといっては何ですが、ふくらはぎ(下腿後側)の中心ラインが引きつっているのに気がつきました。この部位は、本来であれば筋肉の割れ目に当たりますから、谷のようにへこんだ感触であるのが普通だと思います。ところがへこんだ奥に索状の硬いものを触れ、ここも軽く圧しただけで痛むといいます。

「後頭部も足の後側も、同じ膀胱経です」

膀胱経「承山(しょうざん)などにカップを吸着させ、実習は膀胱経へと進みました。そして、ある参加者が背部の膀胱反応部に吸着していたカップの曇りを指摘するのに、さほどの時間はかかりませんでした。

1か所だけカップが曇るというのは、その場所に問題があると考えたほうがよいでしょう。ご本人も冬は膀胱炎に悩まされていたといいますし、経絡も背部の反応部も“膀胱”を軸に連動しているようでした。

一般に不眠症の場合、胆経に反応が現れるケースも多いのですが、今回は膀胱系に現れています。不眠症といっても、やはりこの女性の場合は、自律神経失調症の中の一症状とみるべきなのだと思います。

盆の窪(ぼんのくぼ)に5号
カップを吸着。

膀胱経「承山」の5号カップを吸着。
ふくらはぎの真ん中ラインで、アキレス
腱が筋肉へと移行する部位を目安にする
とよい。筋肉の割れ目にある。

膀胱経の診断点に5号カップを
吸着。
骨盤の仙骨上に取る。仙骨の中
には副交感神経を発する仙髄が
ある。

 眠れない、寝つけない、夜中に目が覚めてしまう、寝た気がしない・・・。睡眠にまつわる障害はつらいものです。なかには3日間まったく眠っていないなどと、実際には考え難いことなのですが、切々と訴える方もいます。あるカッピング療法の研修会で出会った50歳台の女性も、そんなお一人でした。

病院では自律神経失調症といわれたとのことで、不眠のほかにも頭痛や肩コリ、食欲不振や便秘、不自然な冷感や熱感,
動悸、脱力感など、次々と症状を訴えます。まさに病気の問屋さんで、さえぎるタイミングをはずすと延々と話し続けていそうな勢いでした。

実は、このように際限なくさまざまな症状を訴えるのは、ある種の病いのパターンで、治療家などでしたら「ああ、あのタイプ!」と納得される方も多いことでしょう。

 訴えが比較的少なければ個別撃破で局所施療をしてもよいのでしょうが、実際には「アソコもココモ」と要求がエスカレートし、ついつい過剰施療になってしまうことが少なくありません。体力レベルを越えた過剰な施療は、逆に体を疲れさせてしまいます。

今回のケースでも、話は適当に切りあげ、うつ伏せ(話しにくい姿勢でもある)にして体験実習に入ってしまうことにしました。主訴である不眠症を一応視野には入れますが、カッピング療法の指針は背部の色素反応を診ることが中心になります。このようなケースでは、むしろ多彩な訴えに振り回されないことが大切だと思います。

背部に基本的な吸着をした後、後頭部から後頸部をさぐると、強い筋肉のコリがあり、「そうそう、そこが凝っている!」といいます。不眠症や自律神経失調症では、ここにコリのある方が実に多いのです。

施療は胆経「風池」でも、その真ん中のボンノクボでもかまいません。このときはボンノクボに5号カップを吸着させましたが、ここは膀胱経「(ぎょく)(ちん)」や「上天柱(かみてんちゅう)」、督脈「(のう)()」や「風府(ふうふ)」などのツボを一緒に施療することができます。中でも「玉枕」というツボは、ちょうどマクラの当たる位置で、しかも宝玉のマクラなのですから、さぞやグッスリと眠れることでしょう。

髪の毛のある場所への吸着は、研修会などに参加して会得されることをお勧めいたします。