側頭部や体の側面を通る「少陽(しょうよう)」という経絡には、手の三焦経と足の胆経があります。どちらも頭に関係するのは明らかですが、胆経は側頭部を行ったり来たりするため、広い範囲で使われています。

 なかでも後頭部の胆経「風池」は、脳卒中の治療点としてあまりに有名です。どれだけ多くの人が救われたのか、わからないほどです。 「同じ脳卒中で入院していた中で、後遺症もなく社会復帰できたのは、カッピング療法をやった私だけだ」といった話もよく耳にします。

 また、頭痛や首のコリ、不眠症はもちろん、精神疾患やイライラなども、水疱反応が出てスッキリすることがあります。そのほか目や鼻といった顔面の症状にも、施療の主力を「風池」に置くことがあるほどで、首から上の病い全般に欠かすことはできません。

 反応は、脳の障害を除いて、ほとんど悪い側と同じ側の「風池」に現れます。ひどい場合には、片側だけ腫れあがっていることがあり、左右どちらが悪いのか、見ただけでもわかることがあるほどです。

 場所は後頭部と首の境目で、髪の生えぎわ近くになります。ボンノクボの両外側で、筋肉をひと山越えた、押すとツンと感じるところです。4~5号カップを左右からつけるといった感じですが、頭蓋骨の縁がカップの中に入るようにすると効果が高いようです。カップの上の縁が耳の真ん中くらいの高さになるように位置を決めるとよいでしょう。

 また、髪の毛があるところですから、ダイヤルをうまく調整して、連続吸引してください。先の細いクシの柄などを利用し、カップの縁に沿って髪の分け目をつくると吸着しやすくなります。ヘアピンや髪止めなどを利用するのもよい方法です。

 髪の長い方は、髪の毛を丸めてカップの中へ入れて、吸着させてください。

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  脳卒中発作の場合、できるだけ早い段階での思い切った施療がポイントになります。施療が遅くなるほど回復スピードも遅く、後遺症の残るケースが多いようです。

 救急車を呼ぶにしても、施療をしてから病院に送り出す、という心がまえが必要なのかもしれません。

 また「風池」を施療すればよいと知ってはいても、実際に家族が発作に見舞われてしまうと、気持ちが動転して施療できなかった、という話を聞いたことがあります。確かに髪の毛の問題もあり、ほかのツボより手間もかかってしまいます。

 普段から「風池」の施療をしていると予防にもなりますから、家族で施療し合うことで「風池慣れ」しておいて下さい。

また、緊急時にどうしても「風池」に吸着できない場合には、同じく胆経の「完骨(かんこつ)」を覚えておくとよいと思います。

 「完骨」は耳のうしろの骨(乳様突起)の後縁にあります。この骨に3号カップを後ろからかけるようにすると、髪の毛にかかることなく吸着できます。

 ここでも大切なことは、骨の縁をカップの中に入れることです。なぜなら、頭蓋骨に覆われた脳内の瘀血を引き出すには、頭蓋骨の上からよりも、骨の縁からが有効だと思われるからです。

 さらに「完骨」は、あお向けでも首を少し動かすだけで吸着できますから、寝返りの不自由な方でも楽に施療することができます。

 自覚症状はなくても、微小脳梗塞や認知症は30歳台から始まる、といわれています。脳内瘀血は、精神・肉体を含む全人格の中枢を冒すだけに、日頃からの浄血を心がけたいものです。

髪の毛の対策例。
カップに合わせて髪の分け目をつくり、
ヘアピンなどで止めるとよい。長い髪は、カップの中に
入れて吸着させる。


「風池」の治療例。5号カップを二股ゴム管で連続吸引
する。ボンノクボを両側からはさむようなイメージで吸着
させる。